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中国政府と”アメリカ人種力関係”とブロークバック・マウンテン

b0058997_18284719.jpgYahoo!ニュース - ロイター - 中国各紙、アン・リー監督を絶賛も「ゲイ」の部分などカット(アンリー監督の写真もあります
というニュースで、削除された部分というのがちょっと驚きだ。
ゲイコンテンツのため中国では公開禁止になったという
このブロークバック・マウンテンを監督したアンリーがアジア人で
初めて外国映画としてではない(アメリカ映画としての)監督賞を取った、ということで
中国各誌は大きく報道したそうだ。
アンリーが監督賞を受賞した際にステージに上がり
感謝の気持ちを台湾、中国、香港の人たちに向けて中国語で話した、ということを
報道し伝えるも、結局このアカデミー賞が放映されたときは
どのメディアもこの部分をカットしたという。
(元のニュースが編集され再送されました。その違いについてはakaboshiさんのこのブログで早速細かく説明してくれてますのでどうぞ参照して下さい。一番下で残した記事は編集される前の元記事です)

このニュースは中国政府の意向に沿わない部分がカットされた、と報じている。
ということはアンリーは台湾出身、ということが問題なのか。
中国からの独立問題で台湾と中国がピリピリとした関係を長く続けている。
その台湾から抜きん出てアメリカでも最高の賞を取ったアンリーを
中国はかなり複雑な気持ちで見ているのではないか。
中国人の誇り、ではあっても、ゲイの内容だし台湾人だし、ということで。

もちろん、アンリーがこの映画の監督に選ばれたのは偶然ではない、と
思う人が実は多い。保守派もたくさんいるアメリカ映画界で
アカデミー賞に評価されるような
”保守州にいるカウボーイのゲイ”
についての映画をもし白人が作ったらもっと大変なことになっただろうから。
保守州での過激右派、過激キリスト信者による
偏見によるテロ、殺人、事件は良く新聞やニュースを賑わす。
一部の州では中絶を許すな、というプラカードを持って未だにほぼ毎日
病院の前を大声でマーチするキリスト信者も日々なくならないし
中絶を行う医者や看護士の殺人やクリニックの放火は
良く聞く話であることを考えると
保守州の中の文化(州そのものの文化やカウボーイの文化)
による同性愛についての映画を作ることはこの過激右派/キリスト信者を
刺激しているのは当然理解できることであってこの監督が事件に狙われて
しまうのでは、という心配も多々あるだろう。
だからこの記事にあるような
ミシェル・ウィリアムズ、“ゲイ映画”に出演したとして母校から縁を切られるということは不思議ではないし(もちろんこんなことは私は反対だ)アカデミー賞厳戒、候補に問題作ズラリという記事で
”最多8部門にノミネートされ、本命視される「ブロークバック-」も、社会から大きな反発を受けている。ベネチア国際映画祭グランプリ、ゴールデングローブ賞最多4部門受賞など前哨戦を総なめにしてきたが、米国ではキリスト教右派勢力を中心に同性愛を絶対悪とみなす意見も根強い”との背景からテロなどの犯罪を防止するためFBIも含めた警視庁からの
警備がすごかった、というのも当然のように理解ができる。
ミッシェル・ウィリアムズは映画の中では主役の男性の妻役で
旦那の同性愛を見抜いていき、それに不快を感じ表現し
離婚までもしている、という役なのに、この作品に出てる、ということで
母校から追放されてしまったという。
・・・って卒業したのはもうとっくの昔だろうに。

でも考えてみたい。同時にもし彼女がこの映画の監督だったら、一体どんな仕打ちが待っていたのだろうか。
つまり、監督のアンリーが白人でアメリカ人だったらどんな仕打ちを受けていただろうか、ということだ。
いや、白人でなくても既に色々な(偏見、差別、や様々な言葉や表現の)”暴力”を受けているとも予想される。
FBIがテロ対策に警備に出る、という上のニュースにあるようにアカデミー賞
授賞式はこの映画の同性愛コンテンツに反発する過激右派によるテロを恐れ
警備もすごかったようだから
アカデミー賞の参加者は
”こんなテーマをやるから荷物もたくさん調べられ、時間もいつもよりかかり、
とっても面倒になったじゃないか”とも取るだろう。
保守派を刺激しテロが出そうな内容の映画を作り、
またそれが大きく評価されるということは
間接的にも先々の状況的な問題(あるいは不都合さ)をも生む事になるようだ。
まあそういう事を乗り越えてやっと偏見や差別の力関係が崩れていくものなのだろう。

こんなこともあってか、実はチカラのあるものの地位を脅かすような作品は
マイノリティーが選ばれて作っている事が多い。
チカラのある物へのリスクが少ないからだ。
正直マイノリティにとってはその方がある意味都合がよく面白い
作品が自由に出来たりする選択肢も広いかもしれないけども、
”訳のわからない、有色人種だったら自分達白人の価値がわからないんだから”という
ような見下されたところで危険から免れたりするのだ。
極端に言うと”偉い人間が低級の価値をベースにしたものに関わってはいけないし、
低級のもの(人間も含む)が偉い人間の価値を理解する事は不可能”
という偏見、差別のヒエラルキー理念から来ているということになる。

このメンタリティーは大学の中でアジア人が白人についての研究をするのがタブー、というのと似ている。このブログでも何度も書いてるが
白人が白人を、白人が有色人種を研究するのは"当然”なのだが
マイノリティーがマジョリティーの白人を研究するのはもってのほか、なのだ。
有色人種の教授らはこの力関係は理解しているし
逆に”やりやすさ””生き残りやすさ”ということで白人についての
研究をわざと避けようとしているのもいる。
まあ全ての有色人種が白人の研究をしていない訳ではないだろうが
北米でこのタブーを知らずに大学院に来た有色人種(日本人含む)
がヨーロッパ、北米のアングロ研究をするつもりだったのに
後々研究テーマを自分の人種にしろ、などと
指導教官に言われ抵抗して辞めさせられた例をいくつか知っている。
マイノリティーがマイノリティーを研究するのは
どーぞどーぞと喜ばれ、勝手に目立たないものを目立たないところでどーぞ、となるが
権力や地位のあるものを研究するには必ずどこかで批判されるだけではなく
潰される。まあそんな世界だからアンリーがこの映画を監督、というので
北米の権力関係を理解してる人間はなるほど、と思ったものだ。
マイノリティーのアンリー監督がこの映画を作ったほうが白人監督が作った場合よりも
過激右派から同等に見られていない分だけ脅しやリスクもきっと
少ないだろうし攻撃されるなどの相手にもされないだろう、という理解だ。
だから白人がやりたがらない攻撃を受けるようなテーマは
有色人種がやってくれる、という映画界では重宝されるような
立場にあるようにも見え、または攻撃されないという保障がないだけに
有色人種監督は実は北米映画界に”利用”されているのではないか、
と見るものもいる。結局どうみられようがやりたい事がやれるというのが
大事な気もするし家族がいたら本人はやりたくても迷惑がかかる、という
事で有色人種でもかなり慎重に仕事を選ぶ人もいると思う。
まあ、映画界は気持ち悪いほど競争が激しいので(私の大嫌いな表面的な
コネづくりが仕事の中心だ)結局チカラのない有色人種は選択視も
もらえず危険だろうがなんだろうが大きな仕事はチャンスと見る人も多いだろう。

私のアジア系の友人の映画監督も世界各国で映画を上映してても
北米で生き残るには白人についてのの素晴らしい映画を作るまでは認めてもらえない、と
いつも話している。でも自分の作品が有名になる前に北米に来ても
どこにも目を掛けてもらえない。”目立たないところで勝手にどーぞ”
というノリだ。まず自分の人種の人間が中心にいる映画を外国映画として
作るのが先、と見ているようだ。そこで認められて初めて北米で
一人前として見られ、それから白人の作品へ、という順番がある程度あるらしい。

まあとにかく、スピルバーグも競争相手だったのに
彼をも負かしてしまったアンリーはこんな権力、力関係の
中でも実力を見せた、という、なんともスゴイ人なんだなあ。
彼のバイオグラフィーとか読みたくなってしまった。



中国各紙、アン・リー監督を絶賛も「ゲイ」の部分などカット

 3月7日、中国各紙はアカデミー監督賞を受賞したアン・リー監督を絶賛するもスピーチ内容は一部削除。写真は授賞式前にネクタイを結ぶ同監督。AOL提供(2006年 ロイター)
 
 [北京 7日 ロイター] 第78回アカデミー賞で台湾出身のアン・リー監督が「ブロークバック・マウンテン」で監督賞の栄冠に輝いたニュースは、7日付の中国各紙でも大きく取り上げられ絶賛の嵐となった。ただ、中国政府の意向に沿わない部分などについては、スピーチの内容が一部削除されている。
 北京青年報は「アン・リー監督は受賞スピーチの中で中国語で感謝の気持ちを表明」と大きく報道。チャイナデーリー(中国日報)も「アン・リー監督は世界中の中国人の誇り」と絶賛した。
 ただ、どのメディアもリー監督の受賞スピーチの中の「台湾、中国、香港のすべての人々に感謝する」という部分をカットしている。また、映画の主人公であるゲイのカウボーイ2人に感謝したいと述べた部分も報道されなかった。
 中国では2001年頃まで同性愛は精神障害と考えられており、現在でも非常にデリケートなテーマ。「ブロークバック・マウンテン」についても、中国政府は国内での公開を認めていない。
(ロイター) - 3月7日16時8分更新
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by flowfree | 2006-03-08 18:28 | 映画:クイア/同性愛